補中益気湯補中益気湯の解釈

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補中益気湯の解釈

補中益気湯の誤治が多いため記事にします。

漢方専門医にかかられていた患者さんの転院が多くなっていますが…処方を見るにつけため息が出ます。疲れるという訴えはあるのかも知れませんが…補中益気湯などの補剤を出されています。診察をすると胃熱が強く黄連剤の適応が多い様に感じています。加えて厥陰病と少陽病の区別なく、疲れているという症状から単なる「気虚」と考え補剤の漢方薬を使っている専門医の資格を持っている医療関係者の方も多くいる様で残念です。

1 . 補中益気湯の構成と意味

補中益気湯の構成は以下の通りです。
補中益気湯:人参・白朮各4.0;黄耆・当帰各3.0;柴胡・陳皮・大棗・乾生姜各2.0;甘草1.5;升麻1.0

気剤:白朮・大棗
水剤:生姜・陳皮・升麻(麻黄の弱い感じの薬草)
血剤:人参・黄耆・当帰・柴胡
太極:甘草 の様な分類になるのかと考えています。

気剤は下腹部の気剤の白朮、腹部中央の大棗になっています。
ここからすれば…人参が腸に血を生じさせ、当帰でも下腹部の血を作ることになります。表虚であることから黄耆で表の血虚を補い、升麻で少し発表をさせる様な感じです。水に関係がある生姜や陳皮が入っているのは…胃腸虚弱の想定からか? 胃腸の水分を駆逐することを意味しています。柴胡は身体を温めたときに肝臓に熱がたまるのを抑える意味で柴胡が入っていると考えます。

構成から感じる印象としては…下腹部を含めた腹部全体と皮膚を温める薬になります。
傷寒論で言うところの厥陰病で表裏虚の状態に他なりません。胃腸虚弱の状態ですので、お腹はペッタンコで、お腹を触れば動悸が触れる筈です。また柴胡剤ですが…柴胡の量が少ないことから推測すれば投与時点では肝臓のうっ血はないことが多く温めると肝臓のうっ血が出てくる体質であることを物語っています。

この補中益気湯は完璧な補剤であり、厥陰病に属する処方です。

2.倦怠感を取るために補中益気湯で温めるのは殆ど誤治

疲れと言っても色々な疲れ方があるということを念頭にすることが漢方処方では大切です。
厥陰病での疲れならば表裏虚の状態ですので補中益気湯も有効な処方だと考えますが、コロナ後遺症に関しては厥陰病は殆どなく少陽病になっていることが大半で補中益気湯の適応がありません。

厥陰病の疲れは身体のエネルギーが無くなって疲れる形になり…
少陽病の疲れは身体に熱があり、臓器のアンバランスが起きているために疲れやすい。
寒と熱で同じ症状が出ることを漢方医学を使う時に念頭に置くべき重要なことだと思います。

女性は足の冷えを訴えることが多いものです。これは下腹部の充血が強いために起きていることが多いものです。また発熱の前に寒くなることも熱の極致には冷えが先行することになります。
「極陽は極陰に至る。極陰は極陽に至る」これは陰陽説の基本で漢方治療の基本でもあります。


「極陽は極陰に、極陰は極陽に変化すること」を意味するのが陰陽感の基本です。
上の陰陽の図の通り、陰陽は交互変化しているのが自然の陰陽(相対性)の運動です。
ですから、症状が寒に属するものなのか? 熱に属するものなのか?を考えることです。「疲れや怠さ=寒」と公式を念頭に置くことは間違いで、それは誤治の基盤になることを忘れてならない重要なことです。「疲れや怠さ=熱」ということも多いということに他なりません。

脱線しますが…勾玉(まがたま)が組になっているのが陰陽で、遺跡から出土している勾玉をお守りとして持っていた祖先の姿が浮かびます。これは昔の人は有である自分と無である神を常に意識して生活をしていたことが想像できます。

3.補中益気湯の誤治の怖さ

少陽病である身体に補剤である補中益気湯を与えたら非常に危険です。
右の肝臓のうっ血(胸腔苦満)と左の脾臓のうっ血(胃熱)を確認しないで補剤を与えると危険極まりない結果になります。

胃熱があり潰瘍になりかけの患者さんが食欲がなく疲れると言って診察に来たときに補中益気湯を投与すると上部消化管の潰瘍穿孔を起こす可能性があります。補中益気湯により胃熱が逆に強くなり病勢を急激に悪化させます。補中益気湯を服用した最初の数日は元気が出るように感じますが、その後に体調は急激に悪くなります。

「免疫をあげるための補中益気湯」と言う考え方も臓器バランスを崩す結果になりやすくお勧めしません。
ちなみに当院で補中益気湯を使っている患者さんは一人だけです。大腸癌術後で体力低下のために使っています。今はだいぶ体調が良いため補中益気湯は減薬しています。免疫力は身体のバランスが整っていたときに最大になると考えています。ラットを研究材料にしても人間の様に複雑ではなく…免疫力が関係あるという記事には疑問があります。

2023/10/23更新
2022/09/28

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