Case症例

嘔吐下痢

嘔吐と下痢も「経験したことがない人がいない」と言えるほど身近な存在です。ところが、この様な日常的に見られる病的症状にも医師からすると不思議さがあります。そんな不思議さをお話をしたいと思います。

現代医学の考えとしては、嘔吐は胃炎が多く、下痢は腸炎が多いとの勉強を受けますが。「はて?」と思うことは多いです。イレウスならば下痢がやや少なくて嘔吐が強いことになるんでしょう。

クリニックへの苦情を見れば、クリニックへの治療で治らなければ病院へ。そこで「イレウス的」だと言われ治療を受けることもあるのでしょう。イレウスの症状は胃腸炎の延長の様なものです。摂食を中止させて点滴をすれば殆どは内科治療で治ります。感染性腸炎の症状が強ければイレウス的と診断され、持続点滴(1日を通してする点滴)をして絶食すれば治って行きます。

このページをお読みになっている方に知って頂きたいのは「この現代医学の感覚」です。東洋医学・漢方処方を解析すれば胃炎単独でも嘔吐や下痢を伴うことが多くがあります。胃炎=嘔吐、腸炎=下痢という単純な公式が当てはまらないのです。

その違和感をお話したいと思います。

下痢嘔吐の基本的な医学の自分なりの認識

1.胃炎の場合

胃炎ならば嘔吐や胃痛などが主体の症状になる反面、下痢を併発することもあります。高酸性下痢が起こり、胃炎でも胃炎であるのか?それとも腸炎であるのか?が分かりません。一般的な現代医学では上部内視鏡を行い胃の精査をすることが多くなります。

胃炎の場合

左季肋部に気の停滞感と共に熱感があるのが普通です。
この場合には胃薬を主体として治療をします。漢方薬を使うこともありますが、一般薬でも治療は成立し症状の緩和に役立ちます。

2.腸炎の場合

殆どの腸炎は風邪により引き起こされます。この場合には腸の機能が落ちて来ていますので、胃から腸への食物の移動が出来なくなってきます。すると腸炎でありながらも胃炎の様な症状が主体になることがあります。もちろん下痢をすることも多いのですが、患者さんによっては便秘に傾くこともあります。

腸炎の場合
風邪による腸炎の場合には臍部に期の停滞感が認められます。臍部の圧痛もあります。
この場合には胃腸薬と共に抗菌薬を併用します。身近な存在である家族の場合には漢方薬を処方することもありますが、風邪の場合には熱が貯まっている場所の移動が激しく、毎日の診察が必要です。このため外来では一般薬を投与することが多くあります。消化の良い食事をして薬をのめば治ります。

3.胃炎でも腸炎でも、ほぼ同じ症状に他なりません。

今はその診断方法は自分だけなのかも知れませんが、気の流れを見ます。胃炎の場合には左季肋部に気の停滞が強くなります。一方の腸炎では臍部の気の流れが悪くなっています。そのような違いによって見分けることをしています。

4.漢方薬(半夏瀉心湯)が教えてくれる胃炎の姿

半夏瀉心湯から学ぶこと
この半夏瀉心湯は胃炎による下痢の症状を治す漢方薬です。胃熱(脾臓当たりの熱)が強くなり、胃酸が沢山出てきて下痢する症状です。
半夏瀉心湯からすれば胃熱がある反面、胃腸が冷えていることが下痢を引き起こす原因と推測されます。

この様に胃炎と腸炎の判別すら難しい現状で次にどの様な治療をしていくのか?それは病気に対する医師の感覚にかかっているのが事実なのが今の医療ではないか?と思われます。

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