当帰芍薬散当帰芍薬散の解析

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桃核承気湯:構築中 通導散:構築中 加味逍遥散:構築中

当帰芍薬散の解析

1.当帰芍薬散の処方構成

当帰芍薬散:芍薬・茯苓・朮・沢瀉各4.0;当帰・川芎3.0

当帰芍薬散は以上の6つの薬草によって構成されています。
この処方の薬草を気血水の3つに属する薬草に分けます。

気:川芎・朮
血:芍薬・当帰
水:茯苓・沢瀉

以上の様に分けられます。

2.当帰芍薬散の効能解析

当帰芍薬散の効能を推測してみましょう。

この処方の身体の位置は気剤の川芎と朮によって表されています。
朮は下腹部の気剤で、川芎は生殖器の気剤になります。
このことから、この当帰芍薬散は下腹部に作用する処方です。

次に血に属する薬草を考えます。
芍薬は腸の血熱を取る薬草であり、当帰は生殖器の虚血を補う薬草です。

最後に水に属する薬草を考えます。
茯苓は水を体外に出す作用があると思われ、沢瀉は動かない水を動かそうとする役目があります。

このことから推測される当帰芍薬散の姿が浮かび上がります。
「生殖器を含む下腹部の冷えが主体」の身体に効能を発する処方です。

気剤は処方が効く位置の固定をする役割があり、血剤は虚血と充血の調整をする役割があります。
また水剤は水の方向性を示す役割です。

以上より生殖器の虚血に有効がある処方ということになります。
生殖器が冷えているため当帰で温め、冷たい水を排除することがその主眼点です。
ここに芍薬が入っていることは下腹部である生殖器を温めるという処方において、その温めることが骨盤以上に広がらせないために芍薬を用いて腸の血熱を落とすことも考慮に入れている様です。このようなことは他の漢方処方においても多く見受けられます。

3.当帰芍薬散投与の難しさ
3a. 基本

基本的に私は当帰芍薬散を単独で使うことは殆どありません。
生殖器が虚していれば、実している臓器もあり、虚と実を合わせた処方をすることが殆どということになります。

東洋医学での哲学の根本は陰陽論になります。
この陰陽論の真意に対して無知が医療関係者が大多数なのが現実と言わざるを得ません。それは、「足が冷えるから冷え」と考え当帰芍薬散を投与している医療関係者が多いことに戸惑いを覚えます。

それは何故か? それでは、まず陰陽の有名な図をご覧下さい。


どこにもある陰陽図です。
この真意がどこにあるのか?ということを理解することが大切です。

陰と陽は、波の様に変わります。
陰→陽→陰→陽→陰→陽・・・という具合です。

極陰は極陽に繋がる。そして極陽は極陰へと繋がる。
そんなサインカーブの様な関係を維持しています。それが自然です。
そんな現象を根底に置いているのが東洋医学である漢方薬ですが、これを理解できていない医療関係者が多いことに驚き、また失望感もあります。

3b. 臨床での違和感

「足が冷えるので当帰芍薬散」を処方して貰っていましたので、同じように当帰芍薬散を下さい!」
と来院される患者さんもいます。

若い方で、下腹部に気の停滞感が強い状態を確認出来ます。
それが虚血なのか? それとも充血なのか? ということを次に確認します。
下腹部を触れば、虚血か充血かを判断することが出来ます。

この患者さんの場合には下腹部の張りが非常に強い。
この状態で当帰芍薬散や補中益気湯を投与されていた、と。
それで「良くなった?」と効くと「変わらない」と。

私には「そりゃそうだろうな」と言う感覚でしかありません。
何故? 極陽極めれば極陰になる…という東洋医学の基本概念が分からないのか?
それで漢方治療をしていることに違和感を覚えます。
具体的には下腹部が充血傾向で張りが強くても下肢は冷えます。
それを温めることに対して自分には失望感しかありません。冷えは酷くなるだけです。

4.まとめ

寒いと自覚するから温めるという安易な考えでの漢方治療は難しいのでは?と思います。
加えて…症状だけから見分けることが出来るという解説にも違和感があります。
この当帰芍薬散には流産を防ぐ効果もあり重要な処方なのですが、余りに扱い方が雑の様に感じます。加えて身体の変化は虚と実は同時に生まれていることが殆どで…虚に属する当帰芍薬散のみを単独で使うことは珍しいというのが実際に臨床をしていての感じることです。

2024/06/09更新

 

 

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